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「カンボジア クロマートラベルガイドブック」
Vol.11 Apr - Jun 2009

 特集2 カンボジアの酒
スラーソー・タックタナウトチュー

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カンボジアの酒
せっかく旅行に来たからにはその国のお酒をぜひ飲みたいと思う人は多いはず。ところで、カンボジアには地酒ってあるの? どんなお酒があるんだろうと思うそんなあなたに、今回はカンボジアのお酒をご紹介。

米からできた酒
スラーソー
 カンボジアには、スラーソーと呼ばれる米から造る酒がある。「スラー」はカンボジア語でお酒、「ソー」は白いを意味し、カンボジア全土どこでも作られているポピュラーな酒だ。
色は白濁しており、アルコール度数は高く25度ぐらい。味は日本の焼酎といったところだ。市販されているスラーソーブランドなるものはなく、スーパーやコンビニでも売られていない。田舎町のローカル屋台の上でよく見かける、まさに「カンボジアの地酒」と言っていいだろう。
 カンボジアのスラーソーは、日本でいうどぶろくを作って蒸留し冷やす、泡盛のつくりと似ている。村でスラーソーを造る家々では、高床式住居の横に大きな鍋と蒸留するためのパイプと、蒸気を冷やすための大きな水がめの簡易施設を設置している。どこの家にも、その施設の横で豚が飼育されていて、蒸留後の残った酒かすを餌として与えている。酒かすを食べた豚の肉はとても柔らかく美味しいと評判で、高く売れるそうだ。
 シェムリアップ近郊のナット村では、10軒程の家がスラーソーづくりをしているが、昔の日本人が家庭で味噌をつくる感覚と同じで、自分の家族の分と近所へのおすそ分け分、そしてローカルの小さな屋台へ売るための少量だけを製造している。
カンボジアのローカル屋台で見られるスラーソーには、白濁したオリジナルのスラーソーと、もう1種類スラーソーに「タナム」と呼ばれる漢方薬をつけた「スラータナム」と呼ばれる薬用酒がある。通常のスラーソーと違い、色は赤みがかっていて、食前酒として、また健康のために飲まれることが多い。スラータナムには「スラータナム・コーンクチャイ」と呼ばれる出産後の女性が飲む酒もある。スラーソーにフルーツを混ぜた物で、飲むと産後の回復に効果的だとか。

どうして?都会っ子はスラーソーを飲まない
プノンペンやシェムリアップに住む都会っ子たちにスラーソーを飲むかと聞いても、何故か頑なに飲まないという。現に、結婚式などのイベントで振舞われるのはビールやウィスキーばかり。なぜ飲まないのかと聞くと、一般的にスラーソーを飲むのは田舎者と貧しい者だけだという。カンボジア人は全般的に自分がどのように見られているかを気にする「見栄っ張り」が多く、見た目や所持品で人を判断する傾向がある。スラーソーを飲まないというのも、自分が貧乏で田舎者と見られたくないという理由からかもしれない。

砂糖椰子からできたお酒
タック・タナウト・チュー
 スラーソーに並ぶカンボジアの伝統的な地酒に「タック・タナウト・チュー」と呼ばれる砂糖椰子から造られる酒がある。丸いポンポンのようなシルエットが特徴の砂糖椰子。カンボジアの原風景ともいえる、カンボジアならではの木だ。
 椰子酒造りの時期は11月下旬から5月頃。砂糖椰子の花から樹液を採取し、自然に発酵させてできる。この砂糖椰子の樹液、とれたてはあっさり甘いジュース。時間をおくごとに発酵して酸味が増し、最後には酢となる不思議な液体だ。タック・タナウト・チューは甘みと酸味が絶妙で、またアルコール度数もビールほどと高くなく、微炭酸飲料を飲む感覚だ。値段は1リットル1000リエル程度と安価で人気がある。
 今回、美味しいタック・タナウト・チューを造ると評判の、アンコールワットの目の前にあるトロピアンセン村のイヤン・ウンさん宅に訪れた。この道13年というイヤンさんの椰子酒造りは、毎日2回、朝の5時と午後3時に約8本の砂糖椰子の木に登ることからはじまる。象の鼻のような形をした砂糖椰子の花を竹の棒のようなもので挟んで柔らかくし、花の下を切り落としたら、その先を竹筒の中に入れ樹液が溜まるようにセットする。朝セットした樹液は夕方登ったときに回収し、夕方また同じようにして溜めた樹液を次の日の朝回収する。その溜めた樹液に5種類の木の根や皮などのタナム(漢方薬)につけて、椰子酒にする。
 椰子酒は自然に発酵して、時間が経つにつれ酸っぱくなり、最後には酢になる。そのためイヤンさんのお宅では午前とったものはフレッシュなままジュースとして売り、午後とれた分は一晩寝かせて椰子酒にすることが多いという。またジュースを煮詰めれば椰子砂糖にもなるので、採取した樹液を無駄にすることはないそうだ。
 夕方午後4時ぐらいから、どこからともなくイヤンさんの椰子酒を求め人が集まってくる。おつまみ持参でその場で飲んでいく人もいれば、持ち帰る人もいる。
 椰子酒は常に発酵していて、ペットボトルに入れてフタをすると爆発してしまう。なので、市販するまで至っていないが、イヤンさんは将来的には何とかして市場などで売りたいとのことだ。

上)椰子酒をつくるには、木の皮や木の芽などの漢方薬のなかに、椰子の花の樹液を流し込み約7時間程寝かせる。中に入れる漢方薬は各家庭によって違う
下)煙でいぶしたポペールという木の破片を入れた竹筒の中に、花の先端部分を入れ樹液を溜める

クロマートラベルガイドブック 11号